流星を電波を使って解析する流星電波観測

 
   
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Activity Level

 流星電波観測国際プロジェクトで採用されている,流星群活動の活動レベルを示す指標「Activity Level」について,この指標が使用されている背景や,その算出方法等について紹介します.

流星電波観測結果の統合にむけて(導入の背景)

 流星電波観測の特徴は,何といっても天候や昼夜に左右されず安定した観測が可能なのことです.また,世界のデータを統合することで,地球上から流星群の活動を監視することができます.問題はここの「統合することで」という部分で,世界のデータをいかにして統合するかが課題です.

 「流星電波観測の観測結果を全地点分単純平均はできない」
 流星電波観測は,流星数を「エコー」という形でカウントしていますが,このエコー数は,観測条件や観測機材,使用している電波の種類や周波数によって大きく左右されます.眼視観測でいうと,視力の違いや空の明るさの違い,雲の多さなどがあります.眼視観測ではこれらを補正する手だてが確立しており,空が暗く・快晴という最高条件下で見えるであろう流星数(ZHR: Zenithal Hourly Rate)という数値で流星活動の規模を比較しています.

 一方,流星電波観測では,周波数の違いや観測条件・機材の違いを補正する手だてが確立していません.従って,単純平均をするだけでは,観測できるエコー数に差が出ているため,平均値が全く意味をなさなくなります.そこで考えられたのが「Activity Level」です.

Activity Level 算出方法

 それでは実際の算出方法を紹介します.
Activity Level算出式
A(t)は,ある時刻tにおけるActivity Levelの値です.N_obs(t)は,ある時刻tにおける実際観測されたエコー数(HR:1時間あたりへの換算値),N_ave(t)は同時刻の過去2週間の平均値(HR),そしてD_aveは2週間平均値(HR)です.
 つまり,計算式における分子では,「観測したエコー数と平均値との差分」を示しています.その差分が,観測サイトで得られている平均値の何倍になっているかという値を算出しています.従って観測値=平均値であれば,分子が0になるので,Activity Levelは0.つまり,「流星群の特異な活動はなく通常値であった」ということがいえます.分子は平均値を引いていますので,当然Activity Levelの値がマイナスになることもあります.
 分母をD_aveとするかN_Ave(t)とするかの議論がありましたが,N_ave(t)を分母に持ってきた場合,日周変化でエコー数が少ない夕方の値が過大評価される傾向が出たため,D_aveを使用するようにしています.

Activity Level 通常時の分布

 さて,実際この計算式を用いて,流星群活動が見られない時期のActivity Levelを計算してみました.
Activity Level通常値
 2001年〜2007年の2月,3月,9月のデータ総数53,914データを集計しました.その結果,これら全体の平均値は0.0321と,ほぼ0に等しくなりました.ただし,中にはActivity Levelが1.0を超えるものもありますが,全体からすればわずかです.標準偏差(1σ)は0.4534となり,1.5σでも0.6程度と,流星群活動があまり見られない,いわゆる「通常レベル」はこの範囲であり,逆にActivity Levelが1を超えてくる場合は,何らかの流星群活動があったものと推定するのが妥当と考えます.

全データの平均(世界データ統合へ)

 各サイトのActivity Levelを計算したら,いよいよ統合作業を行います.
  (1) 全サイトの中央値と標準偏差を求める
  (2) 各サイトのActivity Levelの値が標準偏差の範囲内かどうかを判定
  (3) 範囲外のデータを除去し,範囲内のデータにおいて,平均値と標準偏差を求める
  (4) この結果をその時間における最終結果として公表する
 この計算過程において,(1)と(2)は異常値除去(観測エラーの可能性が高い数値の除去)の機能を果たしています.また,敢えて(1)で中央値を用いているのは,かけ離れた異常値があると,そちらに平均値が引っ張られるためです.除去した後に平均値でもって,最終値として公表します.

 なお,流星群活動を解析している際は,その対象流星群の放射点が昇っている時間帯のみを採用しています.また,電波観測の特性上,放射点高度が90度近くになるとエコーが受信されにくくなる「天頂効果」が起きるため,(1)の計算時点で,放射点が20度〜80度の範囲にある観測地点だけを採用しています.また,Activity Levelの算出時に,上記の式に加え,放射点高度に伴う流量を補正(理想条件下への補正)をする「1/sin(H) : Hは放射点高度」を使用しています.

Activity Levelの利点

 Activity Levelは比較的簡単な算出式で計算をしています.これこそがActivity Levelの最大のメリットです.つまり,そもそも観測機材や観測条件が異なるデータを確立していない補正をかけたところでその差を拡大するだけであり,次元のない値「相対値」として表現することが最良の方法です.
 また,データを大量に処理しますので,質を量がカバーするようにしています.

Activity Levelの欠点

 上述のような利点がある一方で,この算出方法の最大の欠点は,「データ数が少ないと必然的にエラーバー(標準偏差)が大きくなり,データとしての信頼性が落ちる」ことです.その場合,データが少数サイトに依存するため,値そのものへの信頼性が低くなります.もう一点,使用する周波数によってはActivity Levelの値に差が出てしまうことです.もちろん通常活動レベルとは違うことを発見することはできますが,その活動レベル(Activity Level)がどの程度かという数値は,意外とずれます.それは,Activity Levelの算出式では,通常活動レベル(バックグラウンド)をベースにおいているので,エコー数が多く観測されているサイトの場合は,必然的にActivity Levelの値が小さめに出ます.このあたりがActivity Levelの限界です.