流星と彗星との関係

流星群は何故出現するのでしょうか.ここには彗星(すい星)が関係しています.

流星群と彗星との関係

流星群と彗星の関係は,19世紀にイタリアのSchiaparelliが1866年のしし座流星群大出現後,しし座流星群やペルセウス座流星群の流星ひとつひとつが宇宙空間でどのような運動をしているか計算し,流星が,我々地球と同じように太陽のまわりを一定の周期(地球は1年)でぐるぐる回っていたことがわかりました.ただし,地球や火星のように太陽の周りをきれいな円を描く運動ではなく,楕円を描く運動でした.

楕円を描いて太陽の周りをまわるのは流星だけではなく,有名なものは「彗星」でした。先ほどの流星の軌道と,いくつもある彗星の軌道とを照らし合わせると,しし座流星群に属する流星の軌道は,55P/Temple-Tuttle彗星と,ペルセウス座流星群に属する流星は109P/Swift-Tuttle彗星とそれぞれ軌道が似ていることがわかりました。その後,流星群と彗星との関連性について研究が進み,流星群は彗星が放出したダスト(チリ)が地球軌道と遭遇することによって引き起こされるということがわかりました.この理論からすると,ある一点で地球の軌道と彗星の軌道つまり流星群の軌道とぶつかるので,年中ではなく特定の時期に流星数が増えることも理解できるでしょう.

流星群の元となる「母天体」

母天体とは,流星群を生み出した彗星の事で,学術名では「Parant Body」.以前は母彗星(Parant Comet)と呼ばれていました.流星群の母彗星は見つかっているものもあれば,見つかっていないものもあります.また,既に彗星としての活動を終え,小惑星となっているものもあります(このこともあって,母彗星ではなく母天体の方が現在は適切だと思います).

彗星が作り出す「ダストストリーム」

ダストストリームとは,彗星から流星の元となる大量のチリが放出され,彗星の公転方向と同じ方向に公転している「流星物質の流れ」です.この流れと地球軌道が接近・交差することで地球に流星物質が飛び込んでくるわけです.

MeteorStream1

ここで地球から見たらどう見えるのでしょうか.例えば下の図のように川が流れています.どこまでいってもまっすぐで幅が変わらない川です.でも遠くに行けば行くほど川幅は狭く見え,最終的にはある一点から川が流れているように見えます.そしてそこに木の葉を流してみましょう。木の葉は川に沿って曲がることなくずっとまっすぐ流れるものとします.すると,川がある一点から流れているように見えるのと同じで,木の葉もある一点から流れてくるように見えます.

MeteorStream2

流星群も同じ原理で,流星物質もダストストリームを同じ方向に流れていますが,地球からその流れを見ると,まるで「ある一点から四方八方に流れるように見える」のです.つまり,ダストストリームは川.そしてその川を流れているのは流星物質.その中に入るので,川の上流はある一点から流れてくるように見えます.もうひとつわかりやすい例は,雨の中,透明な傘をさしてその上を見上げると,雨は空から平行にすべて降っているはずなのに,なぜか頭の天辺を中心にして降っているように見えます.これが「ある一点から四方八方に流れる」ように見える理由です.

ダストトレイル

ダストトレイル (Dust Trail)とは,彗星が放出したダストの流れのことで,ダストストリームという大きな流れの中にも,彗星が放出した時期によって,濃淡が生じたその濃い部分のことです.

彗星は太陽に近づくとダスト(流星の元となるチリ)を大量に放出します(彗星が太陽に近づくと明るくそして尾を引きますよね).彗星自身は周期的に太陽に近づくわけですが,その間,時々木星や土星など引力に強い惑星に近づき,その軌道が多少変わります.ダストを放出する彗星の位置が変わるので,地球と遭遇する場所も多少ズレます.これを計算して,いつ放出したダストが今年地球に近づくのか?を計算したのが「ダストトレイルモデル」です.このモデルは,2001年のしし座流星群でD.Asher氏とR.MaNaught氏が発表した論文によってその正確性が示されたことで,とても有名になりました.(このモデルによる研究は,それ以前にロシアのKondrat’eva氏とReznikov氏が1985年に発表されています)

同様の手法で,このあと,フィンランドのLyytinen氏やフランスのVaubaillon氏,日本では佐藤幹哉氏らが様々な母天体の計算を行い,流星群の突発出現や通常よりも増加する活動を予想・発表されています.このモデルにより,流星群の出現予想は飛躍的に進歩しました.

[参考資料]
  • ダストトレイルモデル(内山茂男氏による解説)
  • Kondrat’eva E. D., Reznikov E. A. (1985), “Comet Tempel-Tuttle and the Leonid Meteor Swarm”,Astronomicheskij Vestnik 19, 144-151.
  • McNaought R. H. and Asher D. J. (1999), “Leonid Dust Trails and Meteor Storms”,WGN 27, 85-102.
  • Lyytinen E., Nissinen M. and Flandern T. V. (2001),“Improved 2001 Leonid Storm Predictions from a Refined Model”,WGN29, 110-118.

「流星群とは?」へ  「流星群の一生」へ