流星の明るさ(明るい流星、暗い流星)

流星には夜空を明るくするような明るい流星もあれば,夜空を静かに切り裂く暗い流星もあります.流星の明るさはどのように判断するのでしょう?そして明るい流星や暗い流星の分布はどのようになっているのでしょうか?

流星の明るさ

流星の明るさは,流星自身の速度と質量に依存します.速度が速いものは明るく,質量が大きいものは明るく見られます.流星の明るさは,星の明るさと同じように「等級」という単位で表記されます.例えば,七夕で有名なおりひめ星(こと座のベガ)と同じ明るさの流星であれば「0等級の流星」と表現します.

流星の明るさ

流星の明るさを決めるポイント

まだ流星を見ることに慣れない頃は,1秒にも満たない流星の明るさを決定するのは意外と難しいものがあります.明るさを比較する際に,周辺の星々と比較することが一般的ですが,まず周辺の星々がどのくらいの明るさであるかをある程度知っておく必要があります.春の大三角や夏の大三角など,主立った星の明るさと,覚えやすい星座(オリオン座やカシオペア座など自分が夜空を見て分かる星座)で,ある程度の星の明るさを知っておくのがよいでしょう.

慣れも必要

高速で移動する発光物体の明るさを見積もるのは慣れが必要です.一般的な傾向として,観測し始めの頃は,実際の等級より明るく見積もっているケースが多いでので,是非多くの流星を見て,時には,流星観測に慣れた方と一緒になって観測することが,流星の明るさをより正確に決定する近道となるでしょう.

明るい流星(火球)

時として,明るい流星が見られる時があります.運が良いと月明りのように明るい流星が見られる時もあります.それらを「火球(かきゅう)」と読んでいます.英語ではFireballといわれます.国際天文学連合(IAU)では絶対等級でマイナス4等級より明るい流星と定義しているようですが,実際は-3等級より明るい流星を扱うことが多いようです.




地上に落ちることは稀

通常の流星の発光高度はおよそ上空100kmであり,明るい流星ほど,そして地球への突入速度がゆっくりな流星ほど,消滅高度が低くなる傾向があります.それでも上空50km以上で消滅することがほとんどで,地上に落下することは稀です.地上に落下するとそれを「隕石」と呼び,性質によっては「隕鉄」の場合もあります.

地上に到達するには,基本的には地球への突入角度が浅く,突入速度もゆっくりで,さらに地球大気へ突入した際に崩れにくかったり,大きかったりと,様々な条件が必要になります.とはいえ,可能性がゼロではありません.近年では,2020年7月に千葉県の習志野市周辺に落下した「習志野隕石」があります.近年では流星の観測網も発達しており,夜間であれば火球に関する情報が入ると,複数地点の情報から発光点と消滅点などの要素を計算することができます.

なお,地球の生物を滅ぼすような隕石の落下は本当に稀です.2013年にロシアで隕石が落下し,その時は衝撃波によって,建物が損傷したり,ガラスが割れたり,けが人が出たりしましたが,その時で600kg程度といわれています.前述の習志野隕石の時でも1kg~2kg程度と推定され,このことからも,生物を滅ぼすような特大隕石が落下する可能性は極めて低いといえるでしょう.

もし明るい流星を見たら

明るい流星を目撃すると驚きますが,まずは落ち着いてください.上述のとおり,私たちが住んでいる陸地に到達することは稀です.

そのうえで是非ご報告ください.報告は,日本火球ネットワークに掲示板がございます.そちらにお寄せください.その際の留意事項も書かれていますので,あわせてご確認ください.

流星の色

流星の色について,流星は時々色がついて見えることがあります.慣れてこないとなかなかわからないことが多いです.流星そのものの物質に依存するものと,光る場所の大気に依存するものとがあります.流星物質であればマグネシウムや鉄など,大気であれば酸素や窒素など,何が光っているかによって,見える色は異なってきます.

これらを解明するには,見えている光がどの物質に依存しているか「分光観測」をする必要があります.高校以上であれば「回折格子」とかである物質を燃やして,その光を測定することで元素を特定するということをやった記憶があるような,ないような・・・といった感じでしょうか.基本的に原理は同じで,光を分ける(分光する)ことで,その波長を出す物質が何かを特定します.

流星の光度分布

明るい流星と暗い流星との割合は,夜空の星々と同じで,暗ければ暗いほどその数は多くなります.従って,夜空を一瞬照らすような明るい流星の数は少なく,かすかにしか見えないような暗い流星はそれに比べると格段と数が多くなります.ただし,この後で説明する「流星群」の種類によって,明るい流星と暗い流星との比率は異なります.一般的に,流星群に属する流星は比較的明るい流星が多く,流星群には属さない流星(散在流星)は比較的暗いものが多い傾向があります.この明るさの分布を示す指標として「光度比(Population Index)」があります.

光度比(Population Index)とは

光度比とは,1等級暗くなると流星がどのくらい増えるのか,その比率を表しています.光度比が小さければ明るい流星が多く,光度比が大きい場合は暗い流星が多くなります.例えば散在流星の光度比はおよそ3.0といわれ,2等級で10個だとしたら3等級ではその3倍で30個,4等級ではさらに3倍の90個と計算できます.

光度比

しし座流星群では光度比はおよそ2.5程度で,2等級で10個とすると,3等級は25個で,散在流星よりも明るい流星の割合が多いことが分かります.ただし,人間の目は暗い流星はより見落とすようになりますので,実際は光度比の数字のように2等級で10個だったら3等級で30個(光度比3の場合)ということは実感としてはないでしょう.光度比については,長沢 工氏が執筆している「流星と流星群」(参考図書のページをご覧ください)という本にわかりやすく記されています.


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