ヘルクレス座τ流星群の出現予想

5月末にヘルクレス座τ流星群の出現が予想されています.もちろん確実なものはありませんが,流星電波観測では要チェックです.




ヘルクレス座τ流星群(τ-Herculids)とは?

ヘルクレス座τ流星群は,周期彗星73P/Schwassmann-Wachmann3を母天体とする流星群です.この彗星は1995年に分裂したことが観測され,多くの流星の元となるダストが放出されたと推測されています.

2022年の出現予想

メインピークは5月31日14時(JST)頃と日本では昼間。適地はアメリカ。
日本国内からは、31日未明に1897年のダストトレイルが接近。数は少ないと思われるが要チェック。ピークを越えた31日日没後は、ピークを越えたとはいえ、収束していく様子が捉えられる可能性やそもそも予想ピークがずれる可能性もあるため、31日日没後~1日未明も要チェック。

2022年は1995年放出のダストが地球に接近することが予想されています.研究者によって多少の前後はありますが,日本時間で5月31日14時前後です.

5月31日 13:55(太陽黄経69°.44) (Jenniskens 2006)
5月31日 14:17(太陽黄経69°.459) (Jenniskens 2006)
5月31日 14:04(太陽黄経69°.451) (Sato 2021)

佐藤氏によると彗星からのダストの放出速度が速く,暗い流星が主体と予想されています.

この他にも,1892年や1897年放出のダストとの接近が31日1時(JST)頃~31日19時(JST)頃に予想されています.ただし数は少ないとされています(Wiegert et al.2005).

放射点はヘルクレス座τ流星群と言いつつも,実際はうしかい座と予想されています.

なお,近年の流星群出現予想精度は格段に良くなっているものの,ズレてしまうこと,さらには計算されていないダストトレイルが接近することもないとは言えませんので,5月28日~6月1日あたりは注意した方がよいでしょう.

2022年の観測条件

月齢条件は問題なし

5月30日が新月なので,月明りを気にする必要はありません.これは万国共通です.

ピーク時刻に夜間はアメリカ

ピーク予想時刻は31日14時頃(日本時)と日中です.この時間帯に夜間となるのはアメリカです.緯度が高くなると放射点高度が低くなります.下の図は,世界の主要都市での放射点高度です.(時刻は日本時間で統一してあります)

以下の夜空はサンディエゴ.現地時間で30日21時頃です.緑色の印(天頂付近)が放射点位置です.

日本国内では電波観測に望み

流星電波観測では日中でも観測はできますが,放射点が沈んでいては観測できません.日本では放射点が13:30過ぎに昇り,ピークとされる14時頃の放射点高度はわずか10度程度です.

ピークがずれる可能性もないわけではありませんので,いずれにしてもチェックはしましょう. また,今回この流星群は対地速度が16km/sと比較的遅いため,放射点が浮き上がって見える「天頂引力」が効くと思われます.(天頂引力については,内山茂男氏が詳しく解説頂いています「天頂引力を考慮した ZHR算出時の輻射点高度補正」).天頂引力を加味すると,14時台では放射点高度が20度弱になります.

放射点があるうしかい座は夜間見られる

日本国内の夜間は暗くなってから明け方までいつでも観測できます.今回の放射点はうしかい座にありますが,うしかい座はこの時期,夜間ずっと見えています.以下に,東京における5月31日の02:30頃と20:30頃の星図を掲載しておきます.前述もしましたが,近年の流星群出現予想精度は格段に良くなっているものの,ズレてしまうこと,さらには計算されていないダストトレイルが接近することもないとは言えません.月明りもないので,夜空を眺めてみるのもよいでしょう.この時期ですが夜間は冷えます.暖かくしてご覧ください.

日本(東京)における5月31日02:30頃の夜空
日本(東京)における5月31日20:30頃の夜空

ヘルクレス座τ流星群 流星電波観測速報

世界の流星電波観測結果を用いた流星電波観測速報を提供。

参考資料

  • James Richardson (1999), “A Detailed Analysis of the Geometric Shower Radiant Altitude Correction Factor”, WGN, Journal of the IMO, 27, 308-317.
  • J. Rendtel (2021), “2022 Meteor Shower Calendar”, International Meteor Organization
  • P. Jenniskens (2006), “Meteor Shower and their Parent Comets”. Cambridge University press
  • Wiegert P.A., Brown P.G., Vaubaillon J., Schijns H., (2005) “The τ-Herculid meteor shower and Comet 73P/Schwassmann-Wachmann 3”, MNRAS, 361, 638-644.
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